CFOが語る、世界をつなぐチームづくりとカルチャーの本質
対話と信頼で生み出すグローバルな一体感
はじめに
私はこれまで25年以上にわたり、企業ファイナンスの世界に身を置いてきました。投資銀行やグローバル企業での経営経験を経て、現在はi-PROのCFOそしてCorporate Headとして、財務戦略と組織運営の両面から会社の成長を支えています。振り返れば、私のキャリアは常に「人との協働」によって形づくられてきました。
グローバルチームの結束 ―― “We”と“伝わったか”
i-PROのコーポレート&ファイナンスチームは米国、EMEA、APAC、中国、日本と世界各地に広がっています。グローバル組織を統括していくうえでは、距離が離れていても共通の目的意識を持ち、互いに尊重し合う環境を築くことが非常に重要です。i-PROでは「柔軟・大胆・誠実」という価値観を大切にしていますが、お互いの信頼という土台があってこそ、柔軟かつ大胆な組織運営が成り立ちます。そして、信頼を築くためには、誠実なコミュニケーションが最も大切だと考えています。
■コミュニケーションの哲学
私は、対話の際に“We”と“伝わったか”というポイントを意識しています。英語圏の文化では主語を明確にすることが求められますが、その逆とも言える日本においても、個人の役割を“I”で明確にしつつ、成果は“I”ではなく“We”で語るという意識をチーム間で根付かせるよう徹底しています。また、コミュニケーションでは“伝えたか”ではなく“伝わったか”を重視し、相手の受け取り方まで想像する丁寧さを大切にしています。このような意識付けのため、定期的な1対1の対話や、クロスリージョンのタウンホールやワークショップを開催し、また、「つぶやき」というメールメッセージで色々な考えをメンバーに不定期に伝えてきました。i-PROは、デジタル化がかなり進んでおり、業務やコミュニケーションにおいても様々なデジタルツールを駆使していますが、組織やチームの一体化のためには、やはり、少々泥臭く感じるような丁寧かつリアルなコミュニケーションが大切だと思っています。
■カルチャー醸成――“当たり前?”を問い直し、挑戦を続ける
企業カルチャーは、明文化して掲げるだけでは創られません。i-PROでは「柔軟・大胆・誠実」という価値観を大切にしていることは述べましたが、もはや企業カルチャーとして従業員一人一人に根付いていると感じています。その様な中で、更にこのカルチャーの醸成のために私が重要と考える3つの思考をご紹介します。
1つ目は、日常のやり取りで「それって当たり前じゃない?」という思考停止に陥らないために、質問の背景まで理解し、納得感のある対話を心がけることです。多国籍チームでは、当然、考え方や習慣、常識も違いますし、日本人同士においても、「当たり前」や「常識」には微妙にズレがあるものです。違って当たり前という前提で、共通認識や理解を得れば、結果として大きなズレが防げると考えています。
2つ目は、なるべく発想の幅を広げることです。「水広則魚遊」という禅語をご存じでしょうか? これは中国唐時代の名君主と言われている太宗の言葉で、「川や池の水が広ければ多くの魚が安心して自由に泳ぎ回ることが出来る。自分らしさが発揮できる環境があれば、人も水を得た魚のように自由に生き生きと行動できるようになる」という意味です。これを仕事に重ねて考えてみると、発想の幅を広げることで、各自の“らしさ”が引き出される環境をつくることが肝要ということになります。多様な考えや発想を立場やバックグラウンドに関係なく、傾聴し、認め合い、取り入れることで、「人材が活きる」職場環境を作ることができると思います。
最後3つ目は、「百尺竿頭進一歩(百尺竿頭に一歩を進む)」というように、到達点を通過点と捉えることです。結果に一喜一憂せず、良い取り組みを継続すれば、結果は後から必ず追いついてくるという発想で、このプロセス志向こそが、グローバルで挑戦を続ける私たちの文化であると思います。
CFOの役割を超えて
CFOは、単なるファイナンス面における管理者ではなく、CEOの戦略的パートナーであるべきだと私は考えています。業務だけでなく、プライベートな話題も共有し、深い信頼関係をCEOと築く――この関係性が、より的確で柔軟なコミュニケーションにつながります。同様に、ファイナンスチームは、事業部門の戦略的パートナーであるべきと考えています。各事業部門のパフォーマンス向上のために、部門の良き相談相手となり、成長をサポートすることが、ファイナンスチームの本質的役割の1つであると思います。私自身のみならず、i-PROのファイナンスチームの全員が、戦略的パートナーとして組織全体の成功を支える存在であるように努めていきたいと考えています。
現在、私はCFOの役割の他、コーポレート部門の統括責任者も担っていますが、「プロフィットセンターでないコーポレート部門が、どのようにして企業価値向上に貢献するのか?」ということをよく考えます。 企業価値を利益と評価倍率の掛け算と捉えた時に、評価倍率の構成要素として、利益以外の財務要素(成長率や資本構成など)や、非財務要素(事業戦略やESGの取り組み、従業員エンゲージメントなど)が挙げられると思います。その様に考えると、コーポレート部門の役割は、利益増大に向けたサポートという「守り」と、評価倍率向上に向けた取組の主体的推進・対外的発信などの「攻め」のバランスを高次元で保ち、会社の成長(価値向上)に貢献することと捉えることができるのではないでしょうか。
結びに
私の目標は、コーポレートチームで進めている様々な取組を通じて、i-PROの使命である「より安全で安心できる世界の創造」に貢献することです。グローバルな仲間と共に挑戦を続け、変化を進化へ――“進化を意識した変化”を積み重ね、未来に向けて新たな価値を生み出していきます。

岡本 広生
i-PRO株式会社 取締役 兼 Corporate Head 兼 Chief Financial Officer(CFO)
複数の投資銀行で数多くのM&A案件を手掛けた経験を有し、国内外の企業のCFOおよび経営幹部として企業経営の経験も豊富。 2023年7月にi-PROに参画し、CFOに就任。2025年7月より現職。
i-PRO参画以前は、鬼怒川ゴム工業株式会社CFO・常務執行役員、Amkor Technologies Inc.(”ATI”, 米アリゾナ州)シニアバイスプレジデント、株式会社ジェイデバイス(現、株式会社アムコー・テクノロジー・ジャパン 、ATIの日本子会社)のCFO・代表取締役副社長を歴任。また、クレディ・スイス証券のJapan M&Aグループ共同責任者に加え、ドイツ証券M&Aアドバイザリーグループ、リーマン・ブラザーズ証券 投資銀行本部、モルガンスタンレー証券 M&Aアドバイザリー部において、数々のクロスボーダー案件も含むM&A案件を成功裏にクロージングへと導いた。
学歴:京都大学経済学部経営学科