目次
1. 「人の目」だけに頼る転倒対策の課題
介護現場において、利用者の転倒・転落リスクへの対応は、施設管理職やリーダー共通の大きな課題です。日々、ヒヤリハット報告書を分析し、対策を練っている方も多いのではないでしょうか。
どれだけ緻密な計画を立て、スタッフが丁寧な声かけや見守りを行っていても、「分かっていても防ぎきれない転倒」が起きてしまうことがあります。
この記事では、なぜ今人手に依存した転倒対策だけでは対応が難しくなっているのか、そしてこれからの人手不足時代を生き抜くためにDXを活用した新しい転倒対策アプローチを解説します。
2. 人員確保が難しいなかで高まる介護ニーズ
現場のスタッフが日々利用者の安全確保に努めていても、施設から転倒・転落事故を完全になくすことは難しさが伴います。どんなに熟練したスタッフであっても、目の前の利用者様のケアに全力を注いでいるその瞬間は、身体が一つである以上、別の場所で同時に始まる動きにどうしても手が届かなくなってしまいます。
「見守る対象は増えるのに、人は増えない」という構造的ギャップ
さらにこの問題を深刻にしているのが、人手不足という日本の構造的な背景です。
厚生労働省などの試算によると、高齢化の進行にともない介護ニーズは今後も拡大し続け、2040年には約272万人の介護職員が必要になると予測されています。※1しかしその一方で、日本の働き手となる生産年齢人口は右肩下がりに減少すると見込まれています。※2
実際に現在の求人市場を見ても、募集を出しても担い手が十分に集まらない慢性的な不均衡が続いており、介護現場には見守りを必要とする利用者は増える一方で、担い手の確保は難しくなっています
※1出典:厚生労働省
第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について
令和6年7月12日
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41379.html
※2内閣府:令和7年版高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2025/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf
個人の注意力に頼る対策から、組織的な仕組みへの転換
このような需給ギャップのなかで、現場スタッフ個々の注意力にのみ安全を委ねることには、現実的な難しさが伴います。だからこそ、「個々の経験や注意力」に依存した転倒対策から、施設運営の仕組みとして安全を担保するアプローチへ少しずつ転換を図っていく時期にあるのではないでしょうか。
3. これからの介護現場の転倒対策DX
人の目による見守りだけでは対応が難しくなりつつある今、人手不足を補うための選択肢となるのが「システムや機器導入による介護DX」です。
しかし、「DX」や「ICT化」という言葉を聞くと、大がかりで難しい取り組みのように感じられ、「何から手をつければいいのか分からない」と悩む施設管理職の方は少なくありません。
もし、あなたの施設でこれから機器DXを進めるのであれば、ファーストステップとして有力な選択肢のひとつなのが「見守り機器(見守りカメラ等)」の導入です。なぜ他の業務ではなく、見守り巡回のデジタル化が最も取り組みやすいのか。その理由は、介護業務の「性質」を分析すると明確になります。
介護業務の「時間」と「個別対応の割合」のバランス
介護施設で行われる主な業務は、テクノロジーによって「効率化しやすい領域」と「効率化が難しい領域」の2つに大別できます。

食事・排泄・入浴:標準化が難しい「個別対応」の領域
排泄や食事、入浴といった直接介助は、利用者のその日の体調、タイミング、身体状況や好みに強く依存します。これらは介護士の「手技」や「個別ケア」のスキルが求められるため、個別性や変動要因が大きく、一律に機械へ置き換えるような標準化が難しい領域です。
見守り・巡回:実は多くが「確認」に費やされている領域
一方で、見守りや巡回業務は、一見すると「利用者と関わっている時間」が長く見えるため、デジタル化しにくいと思われがちです。
しかしその実態を紐解くと、スタッフが費やしている時間の多くは直接的なケアではなく、「異変が起きていないかどうかを確認する時間」です。つまり、業務全体の中で占める時間は大きいにもかかわらず、その大半は「異常の有無を確認するために多くの時間が割かれている領域」なのです。テクノロジーを活用して確認業務を効率化できれば、スタッフは本当に介助が必要な場面により多くの時間を充てることができます。
これまでの転倒対策は、「人が気づいて、人が対応する」ことが前提でした。職員の「目」と「経験」だけに頼るのではなく、テクノロジーを組み合わせることで、現場の負担を減らしつつ介護の質を高めることができるのです。
出典:
宮本隆史:社会福祉法人善光会 最高戦略責任者
2025年「介護現場におけるDXの最前線~現状の事例紹介と今後~」
https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/lmeeting_back2025.html
4. 見守りカメラの導入で、介護の転倒対策と現場の働き方はどう変わるのか?
見守り巡回のデジタル化といっても、従来の監視システムのような運用ではありません。
今注目されているのは、「見守りカメラと、職員が持ち歩くスマートフォンやタブレット(専用アプリ)を連携させる仕組み」です。
アラートが鳴った瞬間、職員はどこにいても手元のスマホアプリを開くだけで、その場で利用者の状況を映像で確認できます。この仕組みによって、これからの施設運営や現場の働き方がどのように変化するのか、具体的な4つのメリットを解説します。
「転倒の予兆」をスマホに通知、転倒リスクの高まりに早期対応できる
ベッドセンサーと同様に、最新の見守りカメラでもカメラ内蔵のAIによって利用者がベッドの端に座った瞬間(端坐位)や、起き上がろうとした瞬間(離床)といった「転倒直前の予兆の動き」を自動で検知できます。
この検知と同時に、職員がポケットに入れているスマホアプリへリアルタイムに通知が飛ぶため、ベッドから完全に離れてしまう一歩手前の段階で、先回りして対応を始めることが可能になります。

手元のアプリで「状況確認」ができるから、夜勤帯の訪室が減少
夜間勤務中、利用者の様子を把握するために定期巡視の訪室を行う施設もありますが、それが職員を時間的、精神的にも疲弊させていました。※1
カメラとアプリが連携していれば、アラートが鳴ったその場でスマホ画面を開き、「ただ寝返りを打っただけだな」「今にも立ち上がりそうで危険だから、すぐに行こう」と訪室の優先順位を判断できます。通話機能も搭載しているカメラであれば訪室の前に利用者にお声がけもできます。このように夜勤帯の負担を軽減して、その分余裕を持った丁寧な介護ができるようになります。
※1 出典:介護ロボットの導入支援及び導入効果実証研究事業報告書
厚生労働省 2021年
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000788328.pdf
消灯時の完全な暗闇でも、利用者を起こさずに確認できる
職員が夜間巡回で訪室した際、利用者が目を覚ましてしまうことがあります。それが睡眠の質低下など日中の活動にも影響を及ぼしていました。
夜間や消灯時でも鮮明に居室全体を映し出せる赤外線機能を備えたカメラであれば、スタッフは部屋のドアを一切開けることなく、手元のスマホアプリ越しに静かに安全を確認できます。
見守り機器の活用によって利用者の質の高い睡眠を保ち、日中の活動量増加やレクリエーションの積極参加などQOL向上にも繋がった意見もあります。※1
※1 出典:介護ロボットの導入支援及び導入効果実証研究事業報告書
厚生労働省 2021年
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000788328.pdf
事故報告より客観的な事実確認が可能になり、対策の精度が上がる
もし万が一転倒事故が発生してしまった際も、見守りカメラで「その後」の対応が変わります。
これまでは「目撃者がいないため、おそらくこう動いたのだろう」という、職員の記憶や状況整理をもとにヒヤリハットや事故報告書を作成していました。
しかしながら、見守りカメラの導入によって憶測ではなく「確かなデータ」に基づいて作成できるようになります。また、ご家族へ説明する際も、映像をもとに正確な事実を共有できるため、施設への不信感を防ぎ、信頼関係をしっかりと維持することにつながります。
5. 見守りカメラを実際に導入した企業様の声
実際の介護現場では、見守りカメラの導入によってどのような変化が起きているのでしょうか。
i-PRO社の見守りカメラシステムを導入された、シューペルプリアン株式会社の事例をご紹介します。
導入前の現場の状況
シューペルプリアン株式会社では、見守りカメラの導入前はセンサーが作動するたびにスタッフが現場へ赴き、目視で確認する必要があったそうです。
その結果、不要な訪室や介入が多発し、職員には心理的にも身体的にも大きな負担がかかっていました。
特に夜間の巡回では、1〜2時間ごとに全居室を訪問する必要があり、利用者の睡眠を妨げる要因にもなっていたとのこと。これはスタッフだけでなく、利用者にとっても大きな負担となっており、訪室回数を減らすことは、介護職員と利用者双方にとって重要な課題だったそうです。
導入の効果
そうした課題のなか、見守りカメラを導入したことで、現場では以下のような声を頂いています。
「カメラを導入したことで、遠隔での見守りが可能になったことが大きなメリットです。
特に夜間の巡回では効果が顕著で、訪室は必要最小限で済むようになりました。導入後は訪室回数が半分以下に減少しました。
スタッフは本当に必要な介入に集中できるようになり、効率的なケアが実現できています。」
実際に現場まで足を運ばなくても、状況を確認してから動ける安心感がスタッフのゆとりを生み、結果として利用者へのより質の高いケアへとつながっていると、導入の効果を実感されています。
6. 導入前にクリアしたい「プライバシー」と「費用」の2つの壁
見守りカメラとアプリの連携は、現場の負担軽減と転倒対策に役立つDXツールですが、いざ施設への導入を具体的に検討するとなると、必ず直面するのが「利用者のプライバシー」と「導入コスト(予算)」という2つの現実的な課題ではないでしょうか。
これらの課題に対しても、i-PRO社製の見守りカメラには現在の施設運営に配慮した対応が用意されています。
「監視」を感じさせない、AIによるプライバシー保護機能
居室というプライベートな空間にカメラを設置することに対して、ご本人やご家族から「24時間監視されているようで抵抗がある」という心配の声が上がるのはもっともです。
これに対し、シューペルプリアン株式会社様でも使われているi-PRO社のAI見守りカメラには、映像の中の人物にリアルタイムで自動でモザイクをかける「AIプライバシーガード機能」が搭載されています。
さらに、カメラそのものに通話機能もあるため、通知と映像で危険を察知した際、その場で利用者の方にお声がけができます。
そのため、ご家族に対しても「監視ではなく、万が一の転倒事故から安全を守るための仕組み」として説明しやすく、同意を得やすい設計になっています。

TAISコードの認定と補助金・申請サポート
予算についても、施設経営を後押しする仕組みがあります。
i-PRO社の見守りシステムは、正式に「TAISコード(福祉用具情報コード)」を取得した福祉用具として認めされています。そのため、国や各自治体が推進している「介護テクノロジー導入補助金」といった各種補助金・助成金の対象となり、施設側の自己負担を抑えて導入できるケースが数多くあります。
また、こうした補助金は「申請手続きが複雑でハードルが高い」と感じる管理職の方もいらっしゃるかもしれません。そこでi-PRO社では複雑な補助金申請の手続き自体を伴走・サポートする支援体制も提供しています。

7. 人とテクノロジーの融合で職員・利用者の両方を幸せにする施設運営へ
転倒対策は、スタッフが対応するだけではなく、テクノロジーを活用しながら施設全体で取り組む時代へと変わりつつあります。
見守りカメラは、スタッフに代わる存在ではなく、見守り業務を支援するパートナーです。
利用者の安全確保とスタッフの負担軽減を両立し、より質の高いケアを実現するための選択肢として、見守りカメラの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
スタッフが「空振り訪室」や「見逃しのプレッシャー」から解放されてゆとりが持てるようになり、そのゆとりが利用者への丁寧なケアの源泉になります。さらに、夜間に必要以上の訪室を減らせることで、利用者の安眠やその時本当に介助が必要な方への対応に貢献できます。
人材確保の取り組みに加え、見守りを支える仕組みを整える。
利用者と職員の両方を大切にしながら、これからの時代に合わせた新しい施設運営へ。
i-PRO社は、人の手だけに頼らない新しい見守りの仕組み作りを支援します。