
最近、AIカメラという言葉を見聞きすることが多くなってきました。AIカメラとは、従来の監視防犯用途で使われるネットワークカメラと何が違って、何ができるのか、何に役立つのかなど、本記事ではこれまでの防犯カメラにはない、AIカメラならではの機能やメリット、活用例をご紹介します。
1. AIカメラとは
AIカメラとは、カメラ本体に人工知能(AI)を搭載し、撮影した映像・画像から、様々な検知・分析を行うことができるカメラです。撮影・映像記録を目的とした従来の防犯カメラではできなかったような状況、状態の変化、動きなどを、AIの学習データを用いてより正確に自動で識別することや、状況を数値化し分析することが可能になります。このような特長から、現在、様々な業界、シーンにおいて、セキュリティ用途だけでなく、業務の効率化やマーケティングデータの収集などを目的に採用が進んでいます。
2. AIカメラの機能
AIカメラは、様々な高精度の検知・分析を行うことが可能です。ここでは、AIカメラならではの代表的な機能をご紹介します。
オブジェクト検知・検出
AIカメラでは映像内から特定のモノを識別する「オブジェクト検知・検出」を行うことができます。一般的に防犯カメラの被写体となる人、車両などを、学習した内容と照らし合わせ、人である、車両であることをカメラが自動で識別します。

動体検知
「動体検知」は、撮影映像内の人や車両の動きを検知する機能です。画角全体や一部のエリアを侵入禁止と設定し、そこに何かが入るとアラームを発するような動きができます。人と車両の識別も可能で、車両の立ち入りを禁止するエリア設定があった場合、車両の侵入のみを検出してアラームを発する、その逆に車両専用エリアへの人の侵入を知らせることもできます。また、進行方向を定義することで、指定された方向以外に向かう車や人を検出することもでき、出口から逆進して入ろうとする状況を検知することも可能です。従来の監視防犯カメラの動体検知は、指定されたエリア内の動き、変化だけを検出していましたが、AIカメラでは、その侵入が人なのか、車なのかを判別することができ、犬や猫の侵入などには誤報を発しない運用ができます。



人数カウント、混雑状況検知
AIカメラでは撮影映像内に写っている人を識別し、その人数をカウントすることで、設定エリア内の混雑度合いや人の滞留状況を検知することも可能です。例えば店舗に設置すれば、混雑が発生しやすいタイミングや人の流れ、人が滞留したり集まる場所などを、客観的なデータとして把握することが可能になります。あらかじめエリアごとにしきい値となる人数を設定しておけば、その数値を超えると警告を発するように設定することもでき、店舗人員や商品の適正配置など、運営効率化を図るための状況確認に役立てることもできます。

入口ごと、通路ごとの確認

例では4人待ちになるとアラーム
状態変化検知
「状態変化検知」とは、撮影映像内の人やものの変化をAIで識別・検知する機能です。映像上での状態変化を捉えるため、壁に掛けられた絵画や、通路に配置された置物などの盗難防止目的や、店舗では商品棚の欠品検知としても活用可能です。
人物属性・車両属性
人の年齢、性別や車両の色、車型などの情報を映像に合わせて上位のシステムに提供します。そこに映る人の年齢、性別などの情報から、顧客の属性に合わせて店内のサイネージの表示内容を変えたり、対象を合わせたタイムセールの実施など、マーケティング的に活用することもできます。車両の場合は、セダン、ワゴン、トラック、バスといった車型や車色などの特徴を元に特定の車両を探し出すことができます。
車両のナンバープレート認識
車両のナンバープレートの文字・数字を読み取る「ナンバー認識」もAIカメラが実現する機能のひとつです。AIにより、映像内のナンバープレートに記された文字列を高精度に識別・検知することができます。駐車場に出入りする車のナンバーを自動で識別できるため、入出門ゲートの開閉システムなどと連携を取って契約車両のみにゲートを開けたり、入出門時間の記録から長時間停車の車両を見つけ出すなど管理の自動化、効率化に貢献します。
3. AIカメラを導入するメリット
AIカメラの導入により得られる利点は沢山ありますが、機能面では「高精度の検知と解析」、「リアルタイム性」、そして運用上では「コスト削減」の3点が従来の防犯カメラを超える大きなメリットです。
高精度の検知、解析
高度な学習機能を備えたAIカメラでは、撮影映像を高精度に分析することができ、これまでの映像の動き、変化などから検知を行うシステムに比べて、非常に高い精度の検知、解析が可能となります。従来は誤報となっていたような状況もAIによる検知精度アップにより正しく識別され、一方で従来システムでは見逃していたような変化も逃さず検知できるようになります。誤報が減ることで不必要な巡回を減らせるなど業務効率化にもつながり、一方で検知漏れしていた事象を正しく把握することでセキュリティレベルを上げることができます。また、現場担当者の経験やスキルの差に起因するデータのばらつきや、ヒューマンエラーの影響を心配することなく、高品質で信頼できる分析データを得ることができます。
リアルタイム性
映像データをAIで解析、分析することは画像処理を行うことができる高性能PCを使って実行することもできます。しかしながらカメラの高解像度化、更には長時間撮影されるという特性からそのデータ量は膨大なものになり、この映像データのAI解析を行うには高価な高性能PCを用意しても処理しきれない状態に陥ることが考えられます。処理が追いつかずにタイムラグが発生してしまうと、侵入者検知のアラーム発報などは致命的な影響がでてきます。AIカメラは、各カメラ本体の中にあるAIプロセッサが解析処理を行う為、各カメラからデータを受けるサーバー側の処理も軽くなり、通常の監視業務では必須となるリアルタイム性を確保することも可能になります。
コストを削減
AIカメラでは撮影中の映像の分析を自動かつリアルタイムでカメラの中で行います。前述のようにPCで組まれた環境で映像をAI解析することも可能ではありますが、そこにはハイスペックで高価な環境が必要になります。カメラの台数が増えると、さらなるスペックが要求され、大幅なシステム入れ替えが必要となる場合もあります。
カメラ内にAIプロセッサを搭載したAIカメラなら、処理にかかる高い負荷を各カメラで分散処理することができ、高価なシステムを組むこと無くコストを抑えた運用ができます。カメラの増設が必要になっても、カメラ台数を増やすだけで対応できます。リアルタイム性など防犯カメラとして必要な運用を実現しながら低コストでの運用が可能になります。
また、AIによる高精度な検知によって、誤報による無駄な巡回などの不要な業務の削減により、現場人員の省人化を図るとともに、人手不足の解消も実現できます。
4. AIカメラの活用例
AIによる検知・分析能力を利用した様々な機能を備えたAIカメラは、防犯対策だけでなく幅広い目的・用途で採用されています。ここでは代表的な活用シーンや、そこでのメリットをご紹介します。
防犯対策
AIカメラを設置することで、従来の防犯カメラよりもさらに効果的な防犯対策を実施できます。AIカメラでは、高精度なオブジェクトの検知・検出や、動体検知を行うことが可能です。この機能を活用し、立ち入り禁止エリアへの侵入者を検知して即座に警告したり、スタッフへ通知するといった運用を行うことで、設置場所のセキュリティを高めることができます。特に防犯対策が必要となる夜間の暗闇の中でも、IR LED(赤外線LED)を搭載したAIカメラであれば、動きを検知することができます。PTZカメラ(レンズの向きやズーム倍率を変えられるカメラ)なら、捉えた侵入者をAIで自動で追尾することもできます。


安全対策
製造ラインや様々な機器が稼働する工場・物流倉庫内の安全対策にも、AIカメラは貢献します。例えば、AIカメラの動体検知は、機械の作動範囲など危険なエリアへ人が立ち入った際に赤色灯点灯や警告音の発信、管理者への通知などアラームを出すといった運用が可能です。また、状態変化検知を活用して動線上への荷物の置き去りを素早く見つけ、安全な状態に戻すように警報を発することで事故を未然に防ぐこともできます。
省人化
AIカメラは非常に高い精度での検知が行われるため、誤報による無駄な巡回作業などを減らす効果もあり、巡回業務の削減や人員配置の効率化を図ることができます。
恒常的な人手不足の状態にある介護施設や幼稚園、保育園の「見守り業務」でも、AIカメラは活躍しています。AIカメラは、撮影映像から事故に繋がる可能性のある状況を自動で検知・通知することもでき、トラブルの事前抑止によって業務量の削減を実現します。
業務改善
流通・小売業の現場では人や物の動きの把握にAIカメラを活用し、業務改善につなげています。例えば、状態変化検知では、前述のように商品棚に並べられた商品の在庫数が一定以下になったことを自動で検知することが可能です。通知によって適切なタイミングで商品補充を促すことで、商品棚からの欠品を防ぎ、販売機会の喪失を防ぎます。また、店内の人の動きを見える化し、そのデータをスタッフの配置や売り場レイアウトの見直しなどに活かすこともできます。レジの列に並ぶ人の人数をカウントし、混雑時の応援要請を自動化することも可能です。
マーケティング
小売業では防犯対策に加え、マーケティングへの活用を目的としたAIカメラの採用が増えています。AIカメラでは撮影映像から来店者の人数や、それぞれの属性、売り場での行動などを分析することが可能です。AIカメラの中には360°を俯瞰できる全方位AIカメラもあります。人の動き、動線、人がたくさん集まる通路や場所に関する情報を簡単に取ることができ、店舗レイアウトの見直しや接客方法の改善、キャンペーンの立案などに向けた現状分析データとして活かすことで、より顧客満足度の高い店舗運営を行うことができます。


5. AIカメラの選び方
通常の防犯カメラ同様、AIカメラにも様々な種類のものがあります。備えている機能や特長により適した運用は異なるため、設置場所や利用目的に合ったものを選定するようにしましょう。中でも「スペック」「機能」は機種検討の重要なポイントです。
スペックで選ぶ
通常の防犯カメラ同様、カメラ本体のスペックは機種を選ぶ上で重要なポイントです。例えば、広範囲を高精細に捉えたい場合は、画素数が多く高解像度で広画角なもの、屋外へ設置したい場合は防塵・防水性能の高いもの、といったように設置する場所や用途に合ったスペックのAIカメラを選ぶようにしましょう。また、複数のAIアプリケーションを1台のカメラで同時稼働させたいなどの要望がある場合は、仕様として複数アプリケーションをいくつ同時搭載できるかも必要な要素になります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
防犯カメラに最適な画質とは?画素数による違いや選び方のポイントを紹介
機能で選ぶ
カメラ本体のスペックだけではなく、そのAIカメラがどんな機能、アプリケーションに対応しているかも大事な検討材料です。AIカメラを使ってどんなことがしたいのか、何を実現したいかを明確にし、それが可能なアプリケーションやソフトウェアに対応したAIカメラを選ぶようにしましょう。また、取得したデータの抽出などは、AIカメラのアプリケーション上で行います。AIカメラの機能を最大限に活用するためにも、アプリケーションの操作性やサポートの充実度も重視して、機種検討を行うことが大切です。
6. i-PROのAIカメラとアプリケーション
i-PROでは、様々なシーン・用途に対応できる多彩なAIカメラのラインアップを提供しています。ここまで記したAIカメラ機能の全ては網羅され、更にi-PROならではの独自の強みを活かした製品、アプリケーションや、パートナー企業と連携して開発したAIアプリケーションも各種取り揃えており、幅広い現場のニーズに応えます。
カメラ内で高度な映像分析を実現するAIプロセッサ搭載
i-PROのAIカメラでは、AIプロセッサをカメラ本体内に搭載し、映像の分析、解析処理するエッジAIを採用しています。カメラ本体で映像の処理を行ってから周辺機器に出力するため、別途AI処理用のPCを用意する必要がありません。コストを抑えながら高性能なAIカメラを導入することができます。
AIによる映像の最適化
被写体の識別、解析が行えることで、監視防犯上、必要性の高い人や車の部分の映像を最優先に、その他の背景となるような部分の解像度を抑えるなどによって、結果として映像全体のデータ容量を抑制することができます。これにより、同じ録画容量のレコーダーを使っても、より長時間の映像を撮りためる、ネットワークへの負荷を軽減するなどの効果を発揮することができるようになります。
用途に応じていろいろ選べる充実のラインアップ
製品群の多彩さはi-PROのAIカメラシリーズの大きな特長です。i-PROでは、ボックス型、ドームタイプ、PTZタイプ、全方位カメラなどの基本的な形状の製品に加え、業界最小のAIカメラi-PRO miniもラインアップしています。もちろん、屋外モデルや夜間撮影に適した機種も多数取り揃えており、設置したい場所や周辺環境に合わせた機種選定が可能です。また、取付金具のバリエーションも多く、様々な環境に設置できます。
多様なシーンをサポートするAI活用アプリーション群
i-PROでは充実したカメララインアップに加え、AIカメラの活用を広げる豊富なアプリケーション群も提供しています。自社開発から、パートナー企業と連携して最先端のAI技術を組み込んだ多彩なアプリケーションにより、現場の多様なニーズに応えます。
例えば、i-PROが提供する「AI動体検知アプリケーション」は、撮影映像内の四輪車、二輪車、人物を判別し、検知条件に当てはまった場合にアラーム等で通知するアプリケーションです。検知条件としては「侵入検知」、「滞留検知」、「方向検知」「ラインクロス(任意の線を超える人の検知、その人数カウント)」などがあり、あらかじめ設定したエリア内や境界線上での動きを検知します。目的に合わせた検知条件、エリアの設定により、不審者の侵入を検知して管理者に通知する、長時間留まることを推奨しないエリアにいる人に注意を促す、車の逆走を検知してアラームを鳴らすなど、様々なシーン・用途で活用することができます。更に、距離と時間から移動速度を検出し、制限された速度を超えた車両のみを検出することもでき、安全管理の役立てることもできます。
この他にも、人数カウント、混雑検知、状態変化検知、ナンバー認識、人物属性識別、車両属性識別など多くのAIアプリケーションをラインアップしています。
また、AIカメラ1台で複数のAIアプリケーションを利用できる機種もあり、幅広い用途でマルチに運用できます。
SDK(開発者向けキット)の提供も行っており、i-PRO内だけでなく、ユーザーやサードパーティでの新たなアプリケーション開発のサポートも行っています。
現場学習機能によるさらなる高精度の検知実現
i-PROでは、設置現場に応じたAI追加学習が可能な業界初の「AI現場学習アプリケーション」も提供しています。例えば、工場や倉庫内の安全対策を図るため、AIカメラにフォークリフトを追加学習させ、通行禁止エリアへのフォークリフトの侵入などによる対人事故につながるような事象を検知できるようにする、作業服を学習させてヘルメットなどの安全装備着用有無の自動識別を可能にするなど、運用や目的に合わせた追加学習を現場で行うことができます。実際に使用される環境で撮影される被写体の情報を学習することから、より高精度な検出、検知を行うことができるようになります。追加学習により、それぞれのニーズに合わせた検知が可能になるため、より幅広い現場・目的でAIカメラを活用できます。



AI学習による状態変化の高精度検知
i-PROのAIカメラによる「状態変化検知」は、AIによって予め通常の状態を学習させ、そこからの変化を検知します。通常あるべきものが無くなるなどの盗難の早急な検知や、本来はものの放置が禁止されているような通路上や非常口扉前への荷物の置き去りなど、事故につながるような状況を検知、通知することで未然に問題発生を防止し、安全対策に役立てることもできます。商品棚から商品が無くなっている状態も検知でき、速やかな商品補充を行うことで販売機会の喪失を防ぐこともできます。



カメラとレコーダーのみで実現する人物属性・車両属性
AIカメラでは、映像内の人物や車両の特徴情報をカメラの中で抽出し、映像とともにそれらの情報をレコーダー装置や外部のシステムやなどに提供することができます。人の年齢、性別、髪型、服装(形態や色など)や車両の色、車型、進行する方向などの情報を映像に合わせて上位のシステムに提供します。録画された映像の中から必要なものを探す作業、例えば迷子や不信人物の検索など特定の人物を探しだす際には、この情報が大きな効果を発揮します。さらに、そこに映る人の年齢、性別などの情報から、顧客の属性に合わせて店内のサイネージの表示内容を変えたり、対象を合わせたタイムセールの実施など、マーケティング的に活用することもできます。
車両の場合は、セダン、ワゴン、トラック、バスといった車型や車色、進行方向などの特徴を元に特定の車両を探し出すことができます。膨大な映像データの中から必要な情報を探し出すための付属情報を映像にプラスして提供することで、検索業務にかかる時間と手間を大幅に削減することができます。
i-PROのAIカメラとレコーダーの組み合わせで、PCを介すこと無くこれらの機能を実現することができます。
<レコーダー画面上での迷子検索の例>



AI機能を持たないカメラのAIカメラ化
最上位機種の新XシリーズAIカメラでは、AIプロセッサを搭載していない通常のカメラ(機種は限定)の映像データを中継することで、AIカメラと同等の分析処理を可能とします。システム構成の中に上位機種を入れることで、全体の中のAIカメラの台数を減らし、トータルコストを抑えて運用することも可能です。
7. まとめ
監視防犯カメラによる侵入者などの検知は従来からありましたが、AIカメラの登場により高精度、高機能の検知と検知後の動きの分析、解析などに大きな進化を続けており、様々な分野での活用が広がり、多くの効果を生み出しています。新たな開発可能な内容も日々増えていくと考えられます。
行いたいことを明確にしながら、AIカメラで出来ることを照らし合わせてシステムの導入をご検討ください。
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